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7月28日 細胞のサイズと細胞周期(7月24日号 Science 掲載論文)

2020年7月28日

リン酸化、ユビキチン化、タンパク質分解が組み合わさった細胞周期の調節機構は、私が基礎研究を始めた頃から急速に明らかになり、頭の中には分子ネットワークによる分子機能調節のイメージが染み付いた。そのためか、細胞の大きさにより細胞周期機構が影響されるとは考えたことがなかった。ただ言われてみると、細胞分裂時に細胞の大きさは変化するのに、それ以外では一定の大きさが保たれることは、不思議といえば不思議だ。

これを説明する一つのアイデアが、細胞周期のタイミングを、細胞のサイズに依存して濃度が変わる細胞周期調節分子が存在すれば、細胞分裂のタイミングを決めて、細胞の大きさを一定に揃えることができるというものだ。すっかり忘れていたが、確かに昔このような調節機構について読んだことがある。

今日紹介するスタンフォード大学からの論文は、細胞のサイズによる濃度変化で細胞周期を調節している分子こそがRb1分子であることを示した研究で7月24日号のScienceに掲載された。タイトルは「Cell growth dilutes the cell cycle inhibitor Rb to trigger cell division (細胞の増殖は細胞周期阻害分子RB1を薄めて細胞分裂を誘導する)」だ。

まさにタイトルに書かれていることがこの研究の結論のすべてで、Rb1は細胞周期の阻害を通じて、細胞のサイズを一定に保つ主役であることを示している。話は簡単だが、このことを証明するためには細胞内での正確な分子数の測定と、正確に細胞内の分子発現量を調節する実験系の確立が必要になる。

この研究ではRB1遺伝子に蛍光遺伝子をノックインで融合させ、蛍光を正確に測定する方法で様々な細胞について細胞内の分子の量を測定し、細胞周期進行中にRb1の発現量は上昇するが、細胞のサイズの増大がそれを上回り、ある時点で分裂が起こることを明らかにした。すなわち、Rb1の転写は細胞周期がS期に入ると核の膨張とともに濃度は少しづつ薄められ、ある時点で分裂が抑えきれなくなり分裂し、娘細胞では半減することを示している。一方、他の細胞周期分子にはこのような現象は見られない。

重要なことは、細胞のサイズがRB1の転写を決めているのではない点で、細胞周期の進行中は細胞のサイズとは独立に比較的コンスタントにRb1の合成が続くことで、逆に細胞のサイズをモニターする一種のレファレンスの役割を持つ。さらに、ほとんどが染色体に結合して、正確に娘細胞に分配されることも、Rb1の細胞内濃度を一定にする役割を演じている。

最後にこの仮説を確かめるために、まず染色体上のRb1遺伝子をノックアウトして、Rb1(-/-),Rb1(+/-),Rb1(+/+)マウスの肝細胞の大きさ(肝細胞の場合4倍体、8倍体細胞が存在し、を比べると、予想通りRb遺伝子数に比例して大きさが変わる。

また生後のRb1量が正確に変えられる細胞株を用いて、細胞内でのRB1合成量を変化させると、Rb1量に応じて細胞周期が遅延し、それに伴い細胞の体積も増大することを示している。すなわち、Rb1は細胞周期の時間を調節することで、細胞の大きさを決める要因になっていることを示している。

読み終わって、このような実験がこれまで行われなかったことに驚いた。しかし、しっかり問題を設定すれば、特殊なテクノロジーを使わず面白い研究ができることがよくわかる論文だった。

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