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7月5日 ヒストンの思いがけない機能(7月3日号 Science 掲載論文)

2020年7月5日

ヒストンはクロマチン構造制御の核になる分子で、真核生物特異的な分子だが、その先祖形は古細菌に見られ、同じ様に4量体を形成しているが、クロマチンの調節に関わる証拠はない。したがって、ヒストンは最初他の機能を持つタンパク質として進化したのが、クロマチン制御に関わるタンパク質へと転換されたと考えられる。

今日紹介するカリフォルニア大学ロサンゼルス校からの論文は、H3-H4ヒストンが、銅イオンの還元酵素として重要な働きを持っている一人二役の分子として働いていることを示した論文で、7月3日号のScienceに掲載された。タイトルは「The histone H3-H4 tetramer is a copper reductase enzyme (H3-H4ヒストン4量体は銅イオン還元酵素だ)」だ。

もともとヒストンが銅と結合することは知られていた様だ。このグループは真核生物が地球上に酸素が蓄積し始めたのに平行して現れたことに着目し、真核生物の象徴であるヒストンが酸素毒性を低減させる還元反応に関わるというストーリーを頭に、まずカエルから調整したH3-H44量体が銅イオンと結合するかどうかの検討から始めている。

結果は期待通りで、H3のヒスチジン113とシステイン110の構成する領域に結合し、シスチンをアラニンに変化させると結合が消失する。そして、銅イオンを還元する活性があることを明らかにした。

次の問題は、ではこの銅イオン還元活性が今も重要な機能を果たしているかだが、酵母のヒストンH3の113番目のヒスチジンをアラニンに変化させると酵母の活動性が低下することから、何らかの機能が存在することが示唆された。

そこで、まず核内で銅イオンを要求する転写因子Mac1の活性をH3の突然変異体を用いて調べると、転写活性が抑えられることから、Mac1は1価の銅イオンにより活性化され、ヒストンの変異により一価銅イオンの合成が落ちることで転写活性が抑えられることを示している。

また、核内だけでなくミトコンドリアでの酸素消費がH3の変異体では低下していることを手掛かりに、ミトコンドリアの酸素消費や活性酸素ディスムターゼなどの活性を一価銅イオンの供給を介して調節していることを示している。

他にも、銅イオン還元作用が高まる変異を分離したりと多くの実験が行われているが、基本はヒストンが銅イオンの還元を通して、核内、核外で一価銅イオンの供給を調節しているという話だ。

古細菌でこの分子が欠損するとどうなるのかとか、クロマチン調節に関わる様になった分子基盤など、好奇心が掻き立てられる面白い研究だった。

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