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7月7日 果糖も上手にとれば健康に良い?(6月22日 Nature Metabolism オンライン掲載論文)

2020年7月7日

果糖は文字通り果物に多く含まれる糖で、私が学生の頃は体に悪いという話は全くなかった。その後清涼飲料水の普及に従い、甘み付けに用いられるコーンシロップ中の果糖が肝臓に直接流入して代謝されると、脂肪肝の原因になることが明らかになり、現在では果糖を取り過ぎない様注意が喚起されている。とはいえ、果糖を多く含む果物は今でも健康に良いとされ、摂取が推奨されている。要するに、清涼飲料水の様に一度に果糖を摂取するのが危険ということだが、果糖の安全性を担保してくれているのが、果糖が最初に通る小腸上皮による、果糖の分解能力にあることが最近明らかになった(https://aasj.jp/news/watch/8072)。

今日紹介する同じプリンストン大学からの論文は、この小腸が果たしている果糖のバリアー機能を、小腸特異的ケトンヘキソキナーゼ(KHK)ノックアウトを用いてさらに明確にした研究で6月22日Nature Metabolismオンライン版に掲載された。タイトルは「The small intestine shields the liver from fructose-induced steatosis (小腸は果糖による脂肪肝発生の障壁になっている)」だ。

繰り返すが以前紹介した様に(https://aasj.jp/news/watch/8072)この研究グループは、果糖を食べると、まず小腸上皮でグルコースとグリセレートに分解されるが、処理能力を超える量は直接肝臓に入って脂肪へと変換されることを明らかにした。

この研究はその続きで、では小腸で果糖の分解ができないとどうなるか、小腸特異的にKHKをノックアウトしたマウスを作成し調べている。結果は予想通りで、小腸で分解できないと、多くの果糖が肝臓に流入し、脂肪酸代謝経路に取り込まれることを示している。

この結果血中のtriglyceridesが上昇、ショ糖を8週間摂取させた時に起こる脂肪肝、脂肪肝の程度がさらに悪化することを明らかにしている。これにより、確かに小腸での果糖分解が肝臓を守ってくれていることが明らかになった。

では、小腸で果糖分解能を高めてやればどうなるのか?KHK遺伝子を小腸特異的に過剰発現させたマウスを作って調べている。これも予想通りで、果糖はほとんどグルコースへと転換され、肝臓へ直接移行する量は抑えられる。これに伴い、脂肪代謝経路に取り込まれる量が低下する。

面白いことに、小腸での果糖分解が上昇すると、果糖を避ける様になり(フルクトース1リン酸の蓄積によると考えられる)、このマウスでは脂肪肝が抑えられるかどうかを示すことはできていない。しかし、脂肪代謝から見て、小腸のKHKレベルが果糖の肝臓毒性を和らげていることは間違いない。

これらの結果から、前回述べた様に果糖の毒性を和らげる最大のポイントは、小腸での果糖代謝能力を上昇させ、小腸の処理能力を超えて一度に摂取しないという戦略が成立する。これを確かめるため、同じ量の果糖を4回に分けてとるグループと、一度に摂るグループに分けて調べると、同じ量を摂取しても脂肪代謝経路への取り込みはほとんど上昇しないことを明らかにしている。すなわち果物の果糖は他の成分とともにとるため、少しづつ溶け出して処理されるから健康に良いことになる。

このグループのこれまでの研究を総合すると、果糖を使った、甘くしかも体に良い食べ物も設計できるかもしれない。

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