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9月6日 相分離によるcAMPシグナル調節(9月17日号 Cell 掲載論文)

2020年9月6日
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cAMPはシグナル依存的に合成され、重要なシグナルメッセンジャーとして様々な過程に関わっていることは教科書的知識になっている。ただ、cAMP自体は細胞内を素早く拡散するため、例えば様々なG タンパクシグナルが並行して働いている細胞で、シグナル特異性をどう保証するかが問題になっていた。幸い、cAMPを細胞内で検出する方法が開発され、cAMPは細胞の中のコンパートメントに濃縮されており、これがシグナルの特異性や恒常性に必要であるという概念が示されてきた。

今日紹介するカリフォルニア大学サンデイエゴ校からの論文は、このコンパートメント化がPKAの調節部位RIαが相分離することで可能になっていることを示した研究で9月17日号Cellに掲載された。タイトルは「Phase Separation of a PKA Regulatory Subunit Controls cAMP Compartmentation and Oncogenic Signaling(PKAの調節サブユニットの相分離によりcAMPのコンパートメントかと発ガンシグナルが調節される)」だ。

cAMPがコンパートメント化されていることはすでに知られていたので、問題はコンパートメント化のメカニズムの解明だった。その意味で、正に相分離は誰もが思いつく高い可能性と言えるが、それを証明するためには相分離をガイドする分子、cAMPやPKA活性の細胞内での検出、そして相分離の機能的意味を調べるための様々な方法や材料を確立するために時間がかかったのだと想像する。

その困難を乗り越え、この研究ではPKA複合体を形成する分子の中のRIα分子がcAMPと結合すると相分離を起こし、そこにcAMPをコンパートメント化することをまず明らかにしている。すなわち、外からのシグナルによりcAMPが合成されるとそこでRIαの相分離が起こり、cAMPがコンパートメント化され、そこから周りにシグナルを伝えるという可能性が示された。

様々なセンサーを用いて、PKAの活性やcAMPの局在を調べた結果、この相分離体によりcAMPは細胞質内のcAMP濃度を調節する働きをしており、一方でcAMPを分解するフォスフォディエステラーゼにより、cAMP濃度が低いコンパートメントが維持されることで、一種のセカンドメッセンジャーcAMPの細胞内での勾配がうまれ、シグナル特異性が形成されることを示している。

ただ、ここまでならなるほどで終わるのだが、最後にPKAのカタリティックドメインがDNAJB1遺伝子とキメラを形成するために発生する特殊なFibrolamellar Carcinomaと呼ばれる肝臓ガンの癌遺伝子を細胞に導入した時、相分離が阻害され、その結果PKAシグナルのコントロールが効かずに細胞増殖が高まるという結果を示し、確かに相分離によりcAMPのコンパートメント化がcAMP のシグナル多様性維持に必須であること示し、構造、機能、病理を網羅する研究に仕上がっている。

カテゴリ:論文ウォッチ
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