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11月18日 今明らかにされたシナプス形成過程の調節機構(11月24日号 Cell 掲載論文)

2021年11月18日
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私たちの脳の神経回路形成には、特異的なシナプス形成制御が必須で、特に間違った神経同士でシナプスが形成されないように調節が行われる。例えばニューロリギンやそのリガンドニューレキシンなどはシナプス形成のオーガナイザーとして有名だが、ノックアウトマウスの解析から、このような単純な図式はもはや受け入れられない。もう一つ重要なオーガナイザーがRTN4RのようなRNoGoシグナルに関わる分子で、神経の軸索伸展を抑制して正しい神経結合に必須と考えられている。逆に、脊髄損傷研究分野では、このNoGoシグナルを外して軸索を再生させられないか研究が行われてきた。

今日紹介するスタンフォード大学からの論文は、極めてオーソドックスな実験研究を重ねて、NoGoシグナル受容体RTN4RがBAI-Adhesion GPCRと結合し、軸索伸展、樹状突起、を抑制しつつ、シナプス形成に関わることを明らかにした、この分野では重要な研究で 11月24日号のCellに掲載された。タイトルは「RTN4/NoGo-receptor binding to BAI adhesionGPCRs regulates neuronal development(RTN4/NoGo受容体はBAI adhesion GPCRと結合して神経発生を調節している)」だ。

この研究は、これまでシナプス形成に関わることが知られているBAI-adhesion GPCR(BAI)と結合する相手側の分子の探索から始まっている。極めてオーソドックスな方法でBAI結合分子を特定すると、なんとNoGo受容体RTN4Rと同じファミリーのRTN4RL1が結合分子トップにリストされてきた。これは驚きで、RTN4Rはこれまで全く異なる分子と結合して働いているとされてきた。

そこで、BAIとRTN4RおよびRTN4RL1の結合を生化学的、細胞学的に検討し、

  1. BAIとRTN4Rがナノモルレベルの親和性で結合する。
  2. RTN4RはBAIのTSR3領域と結合するが、結合面にフコース、マンノースの糖鎖修飾が必要

を明らかにし、この2つの分子がセットで、NoGoシグナルを担っている可能性を確認している。

次に、RTN4R遺伝子をノックアウトしたヒトES細胞から神経を誘導、試験管内での神経間相互作用を調べる実験から、電気生理学的にも、細胞学的にも、RTN4RとBAI結合がシナプス形成に必須であることを証明している。

最後に、神経細胞やグリア細胞ごとにBAI発現を調節する実験系を用いて、

  1. グリア細胞のBAIと神経細胞のRTN4Rとの相互作用により、神経軸索の伸展が抑制される。
  2. 神経細胞が発現するBAIにより相手神経細胞の樹状突起形成が抑制される。

ことを明らかにしている。

この結果をまとめると、BAIとRTN4Rは、神経伸展を抑制し、次に樹状突起形成を抑えることで、神経を限られた特定の神経に誘導し、特異的なシナプス形成を促すオーガナイザーの働きをしていることが明らかになった。

遺伝子がクローニングされ、ノックアウト動物が作成されても、詳しいメカニズムを解明するためには、地道なオーソドックスな努力の必要性を教えてくれる重要な研究だと思う。

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