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11月27日 染色体外環状DNAがスーパーエンハンサーのように集まってガンのドライバーとして働く(11月24日 Nature オンライン掲載論文)

2021年11月27日
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昨日のYoutube勉強会で紹介したように、私たちのゲノムは細胞の分裂ごとに何回もDNA切断を経験する(https://www.youtube.com/watch?v=Hz9tCq8xWiA)。当然このとき、近接したカ所で切断が起こると切り出された断片は環状DNAとして細胞内に残り、もしレプリコンとして複製される構造を持っておれば、細胞内にエピゾームとして残る。このエピゾームの中にガンのドライバー遺伝子がコードされ、ガンの増殖を助けるという研究がこれまで何度も発表されてきた。

個人的には否定する理由もないし、ガンによっては問題になるかもしれないと考える程度だったが、今日紹介するスタンフォード大学からの論文を読んで、染色体外DNA(ecDNA)が、多くのガンで働いているかもしれないと思うようになった。タイトルは「ecDNA hubs drive cooperative intermolecular oncogene expression(ecDNAがハブとして分子間のガン遺伝子の協調を駆動している)」だ。

これまで細胞内でecDNAを直接観察することはあまり行われてこなかったように思う。基本的には長くても100kbぐらいのプラスミドなので、少なくとも私は小さなドットが見える程度だろうと思っていた。この研究ではMyc遺伝子の増幅が見られる細胞株で、Myc やEGFR, FGFRなどのガン遺伝子をプローブとしてin situ hybridizationを行うと、大きな領域がMycなどのプローブで染まり、これは染色体上のMycから出るシグナルとは全く別物であることを発見する。すなわち、ecDNAが個別の環状DNAとしてではなく、大きな集合体を形成していることを発見する。

さらにecDNAからの転写を、染色体内遺伝子からの転写と比べると、細胞によってはほとんどがecDNAであることが明らかになり、ecDNAの集合によって強いエンハンサー活性が発揮されていることを見する。

ここまで来ると誰でも、一種のスーパーエンハンサーが形成されている可能性を思いつく。そこで、多くのエンハンサーをまとめ、メディエーターにつなぐBRD4やTetRを蛍光ラベルして観察すると、このecDNAクラスターに局在することがわかった。すなわち離れて存在するecDNAがスーパーエンハンサーによりまとめられクラスターを形成している。

この可能性は、スーパーエンハンサーを抑制するブロモドメインを持つBRDの阻害剤JQ1で細胞を処理すると、スーパーエンハンサーと同じように、ecDNAの集合体が消失することかも示された。

これらの結果をMycの増幅が存在する大腸ガン株でさらに詳しく調べ、この細胞ではnon-coding RNA PVT1とMycの融合したecDNA、MycだけのecDNAを中心に、様々なecDNAが存在していること、また、PTV1−MycとMycだけのecDNA同士が一つのクラスターに集まり相互に転写を高めていることを明らかにする。すなわち、ecDNAはバラバラに存在していても、BRDにより集合することで、ecDNA上に存在する異なるガン遺伝子の高い発現を可能にしていることを示している。

同じ可能性を、FGFRを持つecDNAとMycを持つecDNAが共存する細胞で、詳しく確認しているが、詳細は省く。

要するに、遺伝子増幅が起こるような染色体不安定性がガンで発生しやすく、その結果ガン遺伝子を含む領域がecDNAとして染色体外に移行すると、このようなクラスター形成の結果、さらに強い増殖力を獲得し、他のガン細胞を駆逐する可能性を示した結果だ、いずれにせよ、全てはin situ hybiridizationでecDNAを見るところから始まっており、かなり説得力が高かった。

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