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11月14日 脳は末梢での炎症反応を記憶している(11月24日号 Cell 掲載論文)

2021年11月14日

今年のノーベル医学生理学賞以来、心なしか痛みや体性感覚の論文が増えた気がするが、おそらくこれは違った目で論文を読むようになったからだろう。そんな目にとまったのが今日紹介するイスラエル工学研究所からの論文で、免疫反応を脳の島皮質神経が記憶するという話だ、タイトルは「Insular cortex neurons encode and retrieve specific immune responses(島皮質神経は免疫反応をエンコードしまたその記憶を読み出せる)」だ。

局所の炎症や免疫反応も体性感覚を誘導するから、脳に影響するのは当然で、何が面白いのかと読み始めた。ただ、イントロダクションを読むと、著者らは局所の免疫反応が脳神経に記憶され、この記憶がその後の炎症反応に影響するという大それた仮説を持っていることがわかった。

では、仮説をどう証明するかだが、興奮すると神経に一時的に発現するFos遺伝子を利用して、腸や腹腔での炎症時に興奮する神経をまず特定し、今度はFosを発現した同じ細胞を、これらの細胞だけ刺激したり、抑制したりすることができる、化学遺伝学的手法を用いて操作したとき、末梢で何が起こるかを調べる、という段取りで実験を行っている。

まず、腸に硫酸デキストランを投与して起こした炎症により興奮する神経を探すと、彼らが最初から狙っていた島皮質のグルタミン作動性錐体神経および一部のGABA作動性抑制神経がラベルされる。また、腸の神経をラベルして投射をたどると、炎症により興奮した細胞と一部オーバーラップするので、腸からの島皮質に神経投射があり、その結果神経興奮が見られることが確認されている。

ここまではなんの不思議もない。以前紹介したように炎症性サイトカインはTRPV を直接刺激することもあるから(https://aasj.jp/news/watch/18033)、興奮した神経が島皮質に投射しておれば当然の結果だ。

ただここから先、すなわち島皮質で興奮した同じ神経を興奮させると、局所の免疫細胞や炎症細胞が変化するということは、想像だにしなかった。この研究では、Fosを発現した細胞だけが人工的リガンドで刺激できる受容体を発現するようにし、腸からの刺激に反応した島皮質神経をもう一度CNOと呼ばれる人工リガンドの注射で興奮させられるように操作したマウスを用いて、これを実現している。

驚くことに、腸の炎症により興奮した島皮質神経を再度興奮させると、今度は腸特異的にほぼ同じような炎症状態を誘導することができている。これは、自然免疫に関わる細胞だけでなく、γδT細胞や、CD4T細胞の浸潤も伴う、驚くべき再現だ。一方、島皮質神経をランダムに刺激しただけではこのような局所炎症の再現は全く見られない。また、同じ現象は、腹腔刺激でも誘導でき、この系で呼び起こされる炎症は、腹腔組織特異的で、どこで炎症が起こったのか、脳がしっかり区別していることがわかる。

そして最も驚くべき実験は、腸管の炎症を記憶した細胞の興奮を、抑制性のリガンドで今度は抑えると、硫酸デキストラン投与による炎症の程度を軽減することが可能であるという結果だ。

以上が結果で、例えばワクチン注射した炎症反応は脳でしっかり記憶され、また起こるのではと変に心配していると、副反応が持続し、さらに2回目の接種で反応が高まるといった話になる。鎮痛剤だけではこの記憶を抑制できないことも示されており、体性感覚もここまで精巧になると、制御不能になる心配がある。

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