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12月19日 気になる臨床研究 1. 調査研究3題(The British Medical Journal クリスマス号他)

2024年12月19日
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今日から2日続けて、最近読んで気になった臨床研究論文を紹介する。今日は調査研究、明日は最新の治験研究を選んだ。

まず最も驚いた The British Medical Journal 最新号に掲載された、アルツハイマー病と職業との関係を調べたハーバード大学の論文から紹介する。

タイトルは「タクシーと救急車運転手のアルツハイマー病による死亡率;人口ベースの横断研究」で、タクシーと救急車運転手に注目してアルツハイマー病を原因とする死亡率を他の職業と比べている。

この研究の背景には、ロンドンのタクシー運転手はアルツハイマー病(AD)で傷害される海馬が発達するという研究がある。複雑な町の地図を記憶し頭の中でたどる行動を繰り返すこと、また場所細胞やグリッド細胞が海馬に存在して、地図を参照するときに常に活動するからと説明されている。面白いことに、同じロンドンでも決まったルートを走るバスの運転手では海馬は発達しない。

これにヒントを得て、毎日海馬を使っていいるタクシー運転手は AD になりにくいのではと着想した。そこで、米国死亡統計で記載されている443の職業ごとに AD 死亡率を調べたのがこの研究になる。

結果は見事に的中して、タクシー運転手の AD 死亡率を1とすると、これより低い職業は救急車の運転手で、バスの運転手は3倍、船長で2.8倍、パイロットに至っては4.5倍になる。示された職業では救急車の運転手が一番低い。

もちろん統計の罠にはまっていないか検討は必要だが、これが正しいとすると AD も脳の働かせ方で進行を遅らせることができるという結論になる。

次は11月29日 Science に掲載された南カリフォルニア大学からの論文で、胎児/幼児期の砂糖摂取量と糖尿病の発症率を調べた研究で、タイトルは「最初の1000日間砂糖配給時代に過ごした人は慢性病から守られる」だ。

幼児期に砂糖摂取を抑えることの重要性はわかっているが、対象が妊婦さんや子供となると調べるのが難しい。この問題を、英国で戦後1953年3月まで続いた砂糖の配給時代と、それ以降で分けることで解決している。もちろん平均値で配給時に甘いお菓子を食べていた人も多くいると思うが、国民全体の砂糖摂取量は配給が終わると40%跳ね上がり、すぐに60%増加レベルで維持されている。

そこで、妊娠中のみ配給時代、妊娠から1000日まで配給、そしてそれ以降に分けて2型糖尿病と高血圧の発生率を調べると、配給を経験したポピュレーションが2型糖尿病になるリスクは半分以下になる。また、妊娠期だけでなく、幼児期にも配給で砂糖摂取が制限された方が発生リスクは低くなる。

高血圧や肥満でも同じ傾向が見られることから、胎児期から幼児期で、膵臓のインシュリン分泌システムが成熟するまでに過剰な砂糖を摂取することの問題を見事に指摘している。まさに、公衆衛生の問題として真剣に取り組み必要がある。

最後は米国がん協会からThe Lancet Oncology に発表された論文で、WHO統計から世界各国で若年者の大腸直腸ガンが増加していることを示した研究で、タイトルは「若年と高齢者の大腸直腸ガンの頻度の傾向:人口ベースのガン登録データ」」だ。

1975年から2015年まで、49歳以下、50歳以上で線を引いて、大腸直腸ガンの頻度を調べると、オーストラリア、西ヨーロッパ、そしてアメリカでは50歳以上の患者さんは低下傾向にあるが、若年者は上昇傾向が見られる。

一方アジアの国では、全国統計が進んでいる韓国では、両方のグループで上昇した後、ともに低下に転じており、同じような傾向がフィリピンでも見られる。

一方、日本は先進国と同じで若年層で増加が著しいが、高齢層でもまだ増加傾向は続いている。タイやトルコもよく似た傾向を示す。一方東ヨーロッパではまだ若年層の強い増加は見られていない。

などなどで、勝手に解釈すると、肉の消費が高い先進国では、50歳以上の大腸直腸ガンの増加はおさえられてきたかわリに、頻度は高くないが49歳以前の頻度が増加してきたので要注意という結論で、他の国はまちまちという結果で、何か結論するのは簡単でなさそうだ。

しかし、我が国は両方増加が見られるのは気になる。

明日は、細胞治療とクリスパー治療の治験を紹介する。

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