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12月24日 カロリー制限も悪くないが、カロリー摂取時間制限も肥満を防ぐ(1月7日発行予定 Cell Metabolism 掲載論文)

2019年12月24日
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食べ過ぎ、飲み過ぎになりがちのクリスマスイヴにふさわしい話題と思って、カロリーや肥満の論文を物色していたところ、カリフォルニア大学サンディエゴ校とソーク研究所から、カロリー制限の代わりに、食事時間の調節で肥満と戦うと言う論文が発表されていたので紹介することにした。タイトルは「Ten-Hour Time-Restricted Eating Reduces Weight, Blood Pressure, and Atherogenic Lipids in Patients with Metabolic Syndrome (食事をとるのを10時間に制限すると、メタボリックシンドロームの患者さんの体重、血圧、動脈硬化性脂質が低下する)」だ。

以前も紹介したが(https://aasj.jp/news/watch/8469)空腹時間を伸ばすと、同じカロリーを取っていてもメタボリックシンドロームを改善できることが知られている。ただこの時紹介したような厳重な食事管理を家庭ですることは難しい。

今日紹介する研究は、食事を10時間以内に全て済ませると言うプログラムを、個人に合わせた自由な方法で実現できるように、スマフォのアプリを設計し、このスマフォに腕時計を通して活動記録や脈拍などの連続記録、食事時間と食べた食物の写真を含むレコードなどが集められるようにして、最初2週間はこれまでどおり、その後12週間はできるだけ食事を10時間以内にとる努力をしてもらって、プログラムの開始時、終了時のメタボリックシンドローム指標を調べている。

特に対照群は設定せず、プログラム前後を比べるだけの観察研究。しかし、意識しないと10時間以内というのは簡単でなく、実際50%の人が15時間以上の時間帯で食事をとっており、12時間以内となるとたった10%の人しかいないことが知られている。

まずこのアプリをベースにした方法でどのぐらい目標を達成できるか調べると、参加したほとんどの人が時間制限に成功し、開始前の15.13時間から10.78時間に制限することに成功している。このことは、12週間とはいえアプリをうまく利用すると、10時間以内に食事をとることは可能であることを示している。

このために実際に行われたのは、朝食時間を遅らせること、夕食を早めることで、基本的に朝を抜いて時間を制限するという方法は取られなかった。

さて結果だが、まずこの方法でカロリー摂取量も低下することがわかる。おそらく間食なども減るからだろう。そして体重、BMI、体脂肪率、ウエストサイズなど、大きくはないが優位に低下した。

また、血圧だけでなく、LDL-Cを含むコレステロールはおおきく低下している。

空腹時血糖やインシュリンなどは低下の傾向が見られるが、優位差はみられていない。ただ、血糖の上下変化が大きく低下しており、インシュリン抵抗性が改善されていることがよくわかる。

結果は以上で、特にそれまでのメタボリックシンドロームがすっかり改善した人の話も出てくるが、紹介はいいだろう。食事の時間をなんとか10時間以内に収めることで、食べながら健康になるという話で、少し工夫してやってみてもいいかなと思う

カテゴリ:論文ウォッチ
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