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12月25日 パイエル板の侵害受容器神経の免疫機能(1月9日号 Cell 掲載予定論文)

2019年12月25日

現役時代、多くの教室メンバーの人たちと取り組んだリンパ組織パイエル板についての論文が2報も1月9日発行予定のCellに掲載されていたので、今日から連続して紹介することにした。

まず最初はハーバード大学からの論文で、脊髄後根節神経の一部がパイエル板に侵害受容器の軸索を伸ばし、腸内での細菌感染に重要な役割を示した論文で。タイトルは「Gut-Innervating Nociceptor Neurons Regulate Peyer’s Patch Microfold Cells and SFB Levels to Mediate Salmonella Host Defense (腸管に侵害受容体神経はパイエル板のM細胞とセグメント細菌のレベルを調節することでサルモネラに対するホストの防御を媒介している)」だ。

これまで光遺伝学を用いた研究で、腸管に投射している迷走神経などを刺激することで免疫機能を変化させられることが知られていた。この研究はその中の痛みや機械刺激に反応する侵害受容器を持つ神経細胞だけ遺伝的に欠損させたマウスを作成し、サルモネラ菌の腸内での増殖への影響を調べ、侵害受容体神経が欠損するとサルモネラ菌の腸や脾臓、肝臓での増殖が高まることを発見する。

さらに腸内の侵害受容体神経は迷走神経と後根節神経があるが、後根節細胞を除去した時のみサルモネラ菌の増殖が見られることを確認し、後根節神経細胞が何らかのメカニズムで細菌感染防御に関わっていると結論する。

次にこのメカニズムの探索を2方向から行なっている。一つは、後根節神経除去により起こる腸内細菌叢の変化を調べ、セグメント細菌と呼ばれる細菌が欠損していることを発見する。セグメント細菌は通常パイエル板を覆う上皮に強い局在を示しており、またパイエル板はサルモネラ菌の体内への入り口として考えられているので、セグメント細菌はパイエル板からの細菌侵入を防御していると考えられる。これを確認するため、セグメント細菌を強制的に後根節神経細胞除去マウスに注入してサルモネラ感染を調べると、完全ではないが防御が回復することから、セグメント細菌はパイエル板からのサルモネラ菌侵入を抑えていることが明らかになった。

もう一つの方向は、神経除去によるパイエル板組織構造への直接的影響の探索だが、サルモネラ菌はパイエル板にある特殊上皮M細胞から侵入することがわかっているので、M細胞に焦点を当てて調べると、神経除去によりM細胞の数が上昇している、すなわちサルモネラ菌の入り口が増えていることが明らかになった。

これを確認するため、M細胞の発生に必要なRANKL分子を抑制して、神経除去マウスのM細胞の密度を下げてやると、サルモネラ菌の侵入が抑えられることを確認している。

最後に後根節神経細胞が分泌し、パイエル板M細胞発生に関わる分子を探索し、CGRPと呼ばれるニューロペプチドが、M細胞発生とセグメント細菌維持に重要な役割を持つことを明らかにしている。

結果は以上で、CGRP、M細胞分化、セグメント細菌維持、の3つの柱の間の関係についてはまだはっきりしない点も多いが、役者が出揃ったことから、解明は時間の問題だと思う。特に、リンパ球ができないマウス(それでもパイエル板原器はできる)や、無菌マウスを用いた研究が期待される。ひょっとしたら、パイエル板の場所決めも神経が関わるかもしれない。

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