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12月26日 免疫記憶の常識が覆る?(1月9日号 Cell 掲載予定論文)

2019年12月26日

昨日パイエル板の研究について続けて紹介すると予告したが、これは私の思い違いで、実際にはリンパ節を中心に記憶B細胞の出現を調べたロックフェラー大学からの論文で、タイトルは「Restricted Clonality and Limited Germinal Center Reentry Characterize Memory B Cell Reactivation by Boosting (ブーストによる再刺激により出現する記憶B細胞はクローン数が制限され、胚中心への再移動も制限されている)」だ。

はっきり言って極めてマニアックな論文だが、私のドイツ留学中から繰り返して議論が続いてきた、免疫記憶はどう形成されるかに関わる研究で、これが本当に理解できると、誰にでも効果があるワクチン設計をより論理的に進めることができる。

この分野の研究はあまりフォローしていないが、この論文を読むまで私の頭にあった記憶B細胞のイメージは、最初形成されたB細胞レパートリーから特異性の高いB細胞が選ばれ、この細胞はリンパ組織の胚中心で長期間生存し、次の抗原の侵入には、すでに抗原を記憶したB細胞で対応するというものだった。

この研究では同じ問題に、遺伝的ラベリングによる細胞の追跡や、single cellテクノロジーなどを駆使してチャレンジしている。

その結果まず明らかになったのは、最初の免疫で活性化されたB細胞のレパートリーは、次の抗原注射(ブーストと呼ぶ)で活性化されたいわゆる記憶B細胞とはほとんど重なっていないことだ。もちろん、一部のクローンが長期間働き記憶を形成している場合も見られるが、極めて稀だ。また、ブーストにより発生したクローンも数は限定されており、記憶B細胞として反応するクローンは少ないというこれまでの通説に合致はしているが、これが最初の免疫で作られたからではなく、ブーストのたびに新たにクローンの選択をしていることになる。

以外な結果なので、本当かどうか、最初反応したB細胞をラベルする実験や、1回目の免疫をしたマウスと、免疫をしていないマウスの血管を結合させ、リンパ球が両方のマウスに移動できるようにして調べると、ブーストによって現れるB細胞のほとんどは、最初の免疫で刺激された細胞ではないことが明らかになった。また、最初の免疫に反応したからと言って、胚中心で増殖する活性が高いわけではないこともはっきりし、一部の長期記憶を除いて、抗原ブーストでも新たなB細胞が刺激されることがわかった。

これを確認するため、最初の抗原に反応したB細胞をラベルし、2次反応で活性化されるクローンと系統解析を綿密に行なっているが、詳細はいいだろう。1次免疫とは異なるレパートリーからリクルートされるとはいえ、突然変異はちゃんと蓄積し、抗原に対する親和性も上がっている。

以上の結果は、免疫を繰り返すことでクローン数が限定され、親和性が上昇していくという単純な概念を覆し、「こんな場当たり的な対応で免疫大丈夫か?」と思ってしまう。しかしよく考えると、T細胞の方はしっかりと記憶ができているし、あまり選択してしまうと、抗原のちょっとした変化に対応できなくなる危険があり、それを回避できるという点も重要だ。さらに、インフルエンザワクチンなど、様々なウイルスにさらされているのに、記憶がうまくできないのかも説明できる。

もちろんこのまま鵜呑みにするのはだめで、例えば一生うまく続くワクチンと、そうでないワクチンについて人でのレパートリー解析などを通じて確認が必要だろう。いずれにせよ、このような例があることを念頭に、新しい発想でワクチン開発が大事だと思う。

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