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6月6日 コレステロールの世界地図(6月3日号 Nature 掲載論文)

2020年6月6日

新型コロナ騒ぎで全国的に病院収入が1割減ったことが報じられている。コロナ自体での損失を区別して詳しく精査する必要があるが、この落ち込みが不要不急の医療に当たるのだろうか。

特に興味があるのは、これが世界的傾向なのか、そして高血糖、高脂血症、高血圧などの生活習慣病に関する診療がどの程度減ったのかだ。というのも、この分野の医療費を減らすことが、各国の重要なテーマだった。今回の事象が各国の思惑どおり、メタボで病院に行く前に、まず予防という糸口になればいいが、まだまだ読めない。

今日紹介する世界中の研究機関が集まって発表した論文は2018年の世界の血中コレステロールマップを作成して、前回世界規模で行われた1980年と比較した研究で6月3日号のNatureに掲載された。タイトルは「Repositioning of the global epicentre of non-optimal cholesterol (コレステロール異常の世界的震源地を洗い直す)」だ。

この論文がNatureにふさわしい論文かとも思うが、世界中から1億人の総コレステロール値と、善玉以外のnon-HDLコレステロール値を集め、同じ土俵に乗せて比較することは大変な作業だと思う。

結果は明瞭で、40年前は最悪だった欧米諸国で、総コレステロール値の大幅改善が見られる一方、東南アジア、東アジアでは急速な上昇が見られる。しかし、絶対値で見ると、欧米諸国の値はまだ高いレベルにある。

しかしここからHDLを除いた、いわゆる悪玉で調べると、西欧諸国は絶対値でも低いレベルに落ち着いている一方、東南アジアでは東ヨーロッパに並んで最高値を叩き出している。

面白いことに、総コレステロールの増加は著しいが、東アジアのnon-HDLの絶対値は中程度で、東南アジアとは大きく異なっている。これと並行して、虚血性心疾患による死亡率が、西欧では大きく低下している一方、東南アジアを筆頭に、南アジア、東アジアで大きく上昇している。

要するに、所得が上昇すると最初は高脂肪食へ移行するが、さらに所得が上昇すると、健康に配慮した食生活に変わることを示しており、どの国も経済発展すれば自然にマインドが変わって健康になることを示している。

などと考えながら、コレステロールの変化マップを眺めてみと驚くのは、我が国ではこの40年、ほとんど変化が見られない点だ。幸い、40年前はほとんど世界の平均値だったことを考えると、今も世界の平均値にあると言えるだろう。メタボも我が国では気にすることはなさそうだ。

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