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6月29日 メチル化DNAは癌のスクリーニングの切り札になるか?(6月22日 Nature Medicine オンライン版掲載論文)

2020年6月29日
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ガン細胞から末梢血中に流れ出すDNAに存在する突然変異を解析し、ガンの大きさやステージを診断するリキッドバイオプシーと呼ばれる方法は、転移ガンのモニタリングには定着し始めている(我が国で検査として認められているかは把握していない。ただ、この方法を推進しているグループが期待してきた様に、初期ガンのスクリーニングに用いるまではいっていない。

代わりに注目されているのがガン特異的にメチル化されるDNA配列を直接読んで、このパターンからガンを早い時期から診断する方法の開発が進められており、このHPでも2014年に大便中に存在するメチル化された3遺伝子断片を用いることで、直腸鏡検査と比べた時、92.3%の診断率で大腸ガンの診断が可能であることを示した論文を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/1302)。しかし、現在に至るまで実用化には至っていないのも現実だ。

今日紹介するハーバード大学からの論文はもともとリキッドバイオプシーが難しい腎臓ガンを診断するためのメチル化DNA解析法の開発で、コストはともかく実用可能なところまで来たことを報告している。タイトルは「Detection of renal cell carcinoma using plasma and urine cell-free DNA methylomes (血清中および尿中のメチル化DNA解析を用いて腎臓ガンを検出する)」で、Nature Medicineのオンライン版に6月22日掲載された。

この研究では、まず99人の腎臓ガン患者さんの血清中に存在するDNAからメチル化DNAを精製し、得られたメチル化されたDNA領域の配列を、ガン患者さんと正常とで比べ、ガン患者さん特異的に強くメチル化されるDNA領域300箇所を選び出し、このメチル化領域の頻度から、ガンの存在を予測する検査法を開発している。

結果はステージ1も含め、ガン患者さんをほぼ正確に推定することができる様になり、正常とガンでは99%、ガンと尿管ガンでは98%の診断率で診断可能なこと、さらには尿を材料として使っても86%の診断率で、ステージにかかわらずガンの存在を推定できることを明らかにしている。

以上の結果は、少なくとも腎臓ガンについてはこの方法は実用段階に来たと言えるが、課題はどのぐらいの数が検査可能か、そしてコストだろう。

同じ号のNature Medicineに同じ様な方法でメチル化DNA を解析することでグリオブラストーマの検出が可能であることが報告されていた。この場合もガン特異的メチル化領域300種類を用いており、おそらく腎臓ガンとかぶる領域もあるかもしれない。とすると、今後多くのガンでメチル化データを集め、一回の検査でガンの存在とその種類を診断できるところまで持っていくのは可能性が高い。AIなども組み合わせられると思う。血管誘導性の高いガンにはなると思うが、そこまで進めばスクリーニングとしての現実性を帯びてくると思う。

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