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6月24日 筋肉を鍛えればウイルスに強くなる?(6月12日号 Science Advances 掲載論文)

2020年6月24日
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ウイルス感染に対して私たちは抗体産生と、T細胞を介するキラーや炎症を介して反応するが、ウイルス感染が長引くとT細胞が消耗して反応が低下する。これは、いつまでも炎症やキラー活性が続かない様にする重要な反応だが、感染やガンと戦うためには邪魔な反応になる。このT細胞の消耗は抗原刺激によりT細胞が発現するチェックポイント分子の作用により媒介されており、このシグナルを止めて免疫を長続きさせるのがチェックポイント治療だ。

チェックポイント治療は現在ガンの治療に用いられているが、場合によっては長引くウイルス感染症などにも利用可能で、データはほとんど出てきていないが、新型コロナ感染症に本庶先生のオプジーボを用いる計画は治験登録サイトに早い時期から登録が見られた。

要するにウイルス感染でT細胞の消耗を抑えれば感染を抑えられる確率は上がる。今日紹介するドイツ ガンセンターからの論文は、この問題に筋肉量を高めるという意外な解決策を示唆する論文で6月12日号のScience Advancesに掲載された。タイトルは「Skeletal muscle antagonizes antiviral CD8+  T cell exhaustion (骨格筋は抗ウイルスCD8T細胞の消耗を防ぐ)」だ。

これまでもなんども紹介してきた様に、ウイルス退治の切り札が、感染細胞を殺してくれるキラーT細胞だが、このグループはT細胞の消耗を防ぐIL-15シグナル経路を刺激するIL-15/IL-15Rα複合体の発現がウイルス感染時の筋肉で上昇していることを発見し、筋肉ではT細胞の消耗が防がれる可能性に気が付いた。

この意味を探るために、筋肉細胞のIL-15遺伝子をノックアウトしたマウスにLCMVウイルスを感染させると、全身のPD-1陽性T細胞が増加し、T細胞が消耗する。実際、リンパ組織のCD8細胞と比べると、筋肉組織中のCD8T細胞は高い増殖能を維持している。LCMVウイルスは全身感染させているが、おそらく筋肉ではウイルス抗原や炎症がほとんどなく、T細胞の消耗が防がれる上に、IL-15/IL15RαがT細胞をさらに守っているからだろうと考えられる。すなわち、筋肉がCD8T細胞の心地よい隠れ家になっている。

この時IL-5遺伝子をノックアウトされた筋肉では、T細胞の浸潤が起こらないことから、IL-15シグナルの最も重要な役割は、ウイルス感染により刺激消耗しかけたT細胞を筋肉という隠れ家に呼び込むことといえる。

そして最後にTGFβ受容体を阻害して筋肉量を高めると、CD8Tの消耗をより防ぐことができることを示している。

以上が結果で、実際にはウイルス感染処理についてのデータが全くないので、この効果を少し割り引く必要があるが、そのまま受け取るとウイルス感染に対するキラー免疫は、筋肉を鍛えた人の方が高いことになる。

本当かどうか、疫学調査などで調べる必要はあるが、高齢者で重症化する理由の一つが筋肉の衰えかもしれない。

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