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3月19日 社会的ランキングを測る神経(3月16日 Nature オンライン掲載論文)

2022年3月19日
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今週Natureには、マウスが競争するときに自分のランキングを評価する神経細胞についての論文が、西海岸と東海岸から2報同時に掲載された。見ている領域が片方は内側前頭前野、後の方が帯状皮質で、領域としては異なるが、ともに社会的認知に関わるとされる領域だ。ただ、競争を調べる実験系としては、ハーバード大学からの論文が新鮮で面白いので、こちらを紹介する。タイトルは「Frontal neurons driving competitive behaviour and ecology of social groups(社会的集団での生態と競争的行動を駆動する前頭神経細胞)」だ。

これまでマウスなどの実験動物間の競争とランキングを調べる実験は、基本的に1対1の関係を個々に調べることで行われてきた。これに対し、この研究では大きなケージの中で、餌の入った一部のマウスしか入れない小さな部屋めがけて競争する、より動物生態に近い実験システムを構築し、この時の各マウスの行動を逐一ビデオカメラで追いかけることで、各マウスの社会的ランキングに対応する行動を、他の行動から区別して取り出すことに成功している。

この上で、そのうちの一匹のマウスの前帯状皮質にクラスター電極を設置し、競争時の脳活動をテレメーターで記録している。いくら小型になったとは言え、脳に記録計を入れるだけでハンディキャップになるような気がするが、問わないことにする。

結果だが、まず基本的に身体能力を反映する社会ランキングは、明らかに課題の成功率を反映している。ランキングの高いマウスは半分のトライアルで一等賞を取る。

この時の前帯状皮質の脳活動を調べると、周りの動物との階層関係を推し量る行動時に興奮する神経細胞が37%を占めることがわかる。一方、この領域にはスピードなどの動物の運動能力に反応する神経細胞は存在しない、

面白いことに、社会的階層に反応する神経は、部屋に入った後競争が始まった後よりも、ゲートが開くのを待っている競争前の段階で興奮する。スタートラインに立って、相手の強さを調べていると言った感じだろう。

そして最後に、前帯状皮質を刺激して、ランキングに反応する神経を人為的に興奮させたとき何が起こるかを調べている。驚くことに、低いランクの相手と競争する場合は、さらに成功率が高まる。しかし、高いランクの相手の場合、同じ刺激は成功率の低下につながる。

以上が結果で、要するにスタートラインに立ったとき、相手に勝ったと思えれば勝つチャンスが上がるという話で、多くのスポーツトレーナーが実践している話だろう。しかし、当たり前のことも脳活動として示されると面白い。

カテゴリ:論文ウォッチ
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